鉄道と道路が交差する「踏切」を設計する。

土木設計課長清水目 誠

踏切の設計は一筋縄ではいかない。地上では鉄道と道路が交差し、地下には電力や通信のケーブルが走るため、土木と鉄道、その両方の知識や経験に加え、複合的な視点からの考察や判断が求められる。清水目は新潟県内の多くの踏切計画に携わり、これまで数々の難題を解決してきた踏切設計のスペシャリストである。

鉄道と道路、両方に精通する技術者

改良前の高山踏切

JR上越線の越後滝谷駅と宮内駅間にある高山踏切は、線路と市道が交わる小規模な踏切だ。通勤通学時に交通量が増えるが、道幅はわずか5.5m。自動車はすれ違えず、また歩道がないため歩行者には危険が迫る。2020年、長年の地域住民からの要望に応えて拡幅工事計画が動き出す。設計を任された清水目はまず現地調査を行った。

安全性を考え道路幅は12.7mに決定。そのためには、電力と通信のケーブル、電柱、線路を横断する水路の移設が必要だった。「踏切改良工事では、道路管理者、鉄道会社、電力や通信企業など多くの機関との協議や連携が必要です。中でも、同じ土木領域とはいえ鉄道と道路では、工法や技術も、また守る基準や制度も異なるため、両方を理解していないと仕事が進められません。事前打ち合わせで双方からの質問に対応し、共通認識を形成しておくことも設計の果たすべきことだと思っています」。

水を制して、踏切を設計する

高山踏切改良工事で、清水目にとっての大きな課題は「水」だった。高山踏切の近くには線路を横断する水路があり、拡幅工事に伴い移設する必要があったのだ。列車を運行させながらの工事になるので、軌道下を開削せずに管路を通す工法として当初は一般的な小口径管推進工法(泥土圧式)想定していたが、軌道へ与える影響が最も小さいFCR推進工法(鋼管タイプ)を選定。この選定した工法は2重ケーシング式推進後に形成する強化プラスチック管が列車荷重に耐えうる構造かを確認した上で採用した。水理機能はサイホン構造で確保し、水にも鉄道にも改良工事による影響を与えることのない設計を行った。

それ以外にも地域性と踏切固有の課題解決のための装置を設計に盛り込んだ。雪の多いエリアなので、融雪装置には熱伝導率の高いヒートポンプ式を選び、高架になった国道が隣接しているため、警報機には全方向で警報点滅が見られる全方位型警報機を設置した。さらに、踏切の前後に水たまりができ歩行者が通行しにくいと聞き、清水目は新たに道路排水設備を計画した。すべては安全のため。人と自動車と鉄道が安全に高山踏切を通行できる設計図が完成した。

地域の人々の要望に応える

改良後の高山踏切、画面左部に見えるのがループコイル式支障物検知装置

全国に張り巡らされた鉄道の線路は、利便性をもたらすと同時に踏切事故という危険もはらんでいる。清水目が目指しているのは、人や自動車が踏切内に取り残され、列車と接触する事故をなくすことだ。 「新潟県では、踏切が通学路に含まれる場合や高齢者が渡ることも多いので、バリアフリー化の推進や高度化する安全装置の導入が必要です」。高山踏切では踏切内に侵入した車両が一定時間動かないときに反応するループコイル式支障物検知装置を採用した。安全のためにプラスされるものを積極的に取り入れながら踏切改良に挑んでいきたいと、清水目は抱負を語る。

高山踏切の設計で清水目は後輩技術者2名を率いて主担当者を務めた。「技術面とマネジメントの両面でこれまでに蓄積されたノウハウを若い人たちに指導していくことも私の役割です」。建設コンサルタントの使命は、自分が造りたいものではなく、地域の人々の要望に応えること――その姿勢も伝えていきたいと清水目はインタビューを締めくくった。